ソラリス合同誌について

 本当にバラエティ豊かな作品がそろったと思う。五十年後の今、ソラリスをやるということで個人的にもっとも注力したのは批評性だった。
 企画した当初は、アニメ等のキャラクターがソラリスに行ったらどんな幽体Fが出て、なにが起こるのだろうという興味が先だったものだったが、結果として集まってきたのは、多面的な解釈からソラリスは何だったのか、ということを浮き彫りにした作品集に仕上がったと思う。
 以下に、コメントをつける。ネタバレを含むので、読まれる方は
http://specters666.tumblr.com/post/133925186511/%E8%87%AA%E5%AE%B6%E9%80%9A%E8%B2%A9%E3%81%AE%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B
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 太陽の扉/がせ
 殺伐百合の企画者らしい、殺伐とした百合。当初アイカツ!二次創作でレズファックシーンを書いていたことを山像氏は恐れていた。
 ソラリスマクガフィンに使った、アイカツキャラが中心の作品。特にミモイドの風景がそらに訴えかけてくるシーンは、使い方が巧みであった。がせぴょんはあるものの延長戦上を描き出すのが得意なんだにゃあ。
『舞台としてのソラリス』というものを浮き彫りにした、実は一番当初の企画に忠実に書かれた作品。


 Beyond the Time and Space/追田琴梨
 読んだときは、こう来たか!とひざを打った。確かに、アニメ作品のような設定年代も明らかにされておらずシームレスにソラリス学というファクターを輸入できるものと違い、ナマモノ同人としてソラリスをやるにはコールドスリープはかなりさえていると思う。またソラリスの一部でしかない〈客〉(幽体F)をモチーフにすることによりソラリス自体への追及が薄らぐ問題を、クリス・ケルヴィンを登場させ、『ソラリス』をケルヴィンが書いたものとし、ソダーバーグ、タルコフスキーの映画に言及させたのもなかなか悪賢い男だと感心した。
 モー娘。については自分はほとんどわからないが、作者のグループ愛が先行しすぎず、キャラクタ的にデフォルメされる形で抑制されていたので、ソラリス二次創作として楽しく読むことができたが、ハロプロが好きな人にはもっとニヤリとできる機会があったのではないだろうか。


 レム式/そらりすてーしょん/山像樹
 pixivに公開された宣伝漫画、本作、あとがきの三つの連関によって完成される作品で、本誌に掲載された作品自体は割とそれらのための踏み台感がある。
(ぶっちゃけ全部合わせたときが最も効用が大きいので該当ページのQRコードを本誌に乗せたいくらいではあった)
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=53588867
 なにも言わずにこれを読んでください。頼む。


 ソラリスを待ちながら?ぷりっ!/とまる勝子
 一番おちゃらけてぶっとんだことやってる作品だけど、作中に批評性の片りんが残っていると思った。(書いた当人は「批評性の塊だろ!」って言ってた)
 なんつーかテーマは批評的な部分だと思ったんだけど自分の視点がプリパラ性に向いてしまい、結果としてさしはさまれるメタ言及がぼこんぼこんと浮彫になった気がしたのよね。
 批評性批評性言ってると批評性がなんなのかわかんなくなってくる。
 ちなみにこれを読んでから後追いでプリパラを見ているわけだけれども、読んだ瞬間から「あっ、再現度高そうだ」と思っていたところ本当に再現度が高いことが分かった。


 てんのうみよりきたるもの/木口塔子
 作者が舞台をやってらっしゃる方ということもあってか、舞台的な作品だと思った。(偏見か?)
 当初、美城常務がソラリスに行ったら顔のない天海春香が出てきて、なんやかんやあって奇形のアイドルが大量に生み出され、それがのちのシンデレラガールズであった。という話になる予定だったが、今作に軌道修正。
 プリパラ、ラブライブなどにも言及され、ソーシャルゲームについてのゲーム的リアリズムに絡めたオチとなった。(もちろんそこだけじゃない点が木口さんのすごいところ)
 こちらも当初の企画意図に即した作品で、一番SFしている作品でもあった。


 Children of the Sea/平群泰道
 この本が出る直前に、Twitterでお前がママになるんだよ!というミームが流行した。
 この作品はまさに一言で表すとそれに集約する物語で、ソラリスにゲッター線を浴びたらソラリスがママになるんじゃね?というそれだけの話。
 ここは僕の勉強不足なんだけど、細胞分裂(そして生殖)という機構が進化の途上でどうやって発生したのかも結構謎なのでは、と感じたところが出発点で、ゲッター線は全部解決してくれるからいいエネルギーだなあと思いました。
 反省点はたくさんあるけど、自分の中ではかなりよくまとまった作品ではないかと思う。久々に書くことの楽しさを感じた、非常にいい作品だった。この本を作って本当によかった。