備忘

 確かソラリス合同誌の打ち合わせの時だったと思う。目白のファミレスで俺と勝子を含む四人ほどであーでもないこーでもないとやっていた。
 店内が禁煙だったので、勝子と煙草を吸いに出た。昼休憩中の中華料理屋の店前の灰皿を利用させてもらってだらだらしていると、身なりのよさそうなおばさんが、道を尋ねてきた。なんでもおばさんは教員で、教え子がホームパーティをやるのに呼ばれたのだという。
 おばさんの手に下げられたビニール袋の中には、たくさんの缶ビールが。俺と勝子は下心丸出しで、マンションの名前をスマホで調べて、丁寧におばさんを案内した。
 おばさんが「お礼にちょっと参加していきなよ」と言うので、しめしめ、とばかりにエレベーターに乗り込んで、パーティが開かれているという屋上に着いた。そこでは、丘サーファーみたいなあんちゃんたちがパリピっぽいBBQを繰り広げていた。
 俺と勝子も、まあお察しの通り陰キャである。顔を見合わせて、なにも頂戴せずに、へらへらうすら笑いを浮かべてから、すぐにマンションを辞去した。
「ちくしょう、ただ酒が飲めると思っていたのに」
 勝子が言った。俺も同じ気持ちだった。