貴種流離譚

 そうめんを流した。人生初の流しそうめんだ。

 流水にそうめんを委ねそれを掬いあげるという文化を知ったのは、確かテレビアニメのコボちゃんだったと記憶している。検証もしていなければ、記憶もあやふやなので、サザエさんだったかもしれない。自分が幼少期のころに放送していたそのあたりのファミリー向けアニメだ。

 セイキンTVで「そうめんスライダー」の紹介を新商品が出るたびにやっている。毎度楽しみでそれを観ていたのだが、引っ越して空間に余裕が生じ、人を家に招くことに衒いが亡くなったことで、自分も家でそうめんを流すことに興じようと思った。

 本来なら自分にプラスして四人が参加するハズだったが、二人が体調不良で欠席。この季節の変わり目に平素の屈託の帳尻を合わせようとした反動が、後半に差し掛かって出てきたと思えばありそうな話で、超大型連休も考え物である。もともと自分以外の全員が初対面というそうめんマスカレードになるはずではあったのだが、そこに関しては良かったかもしれない。欠席者二人の一刻も早い回復を祈る。

 会自体は好評だったと思う。揖保乃糸の上級が引っ越し前の家の近くのスーパーで約半額になっていたのでまとめて買っていたものが、ようやく処分できた。セール品の烙印を押された貴種が水に流され、また各々の胃の中へ流されて行ったというわけである。

 余談だが、自分が購入した「そうめんアドベンチャー」はサマーランドにあるウォータースライダーを模したものであるらしい。人間が流れゆくさまを模した機械でそうめんを流す。今度からサマーランドに行く際にはいろいろと考えてしまうというのは、参加者の一人の弁である。

 さておき、前日に気合いを入れてあおさやら海苔やらの薬味をしこたま買い込んでいたのだが、食べるラー油とわけぎしか出番がなかった。これらは後日自分で処理しようと思う。